トラックドライバーの働き方を判断するなら、「実働時間」より先に「拘束時間」を見てください。拘束時間は、始業から終業まで会社に拘束される時間のことで、運転している時間だけではありません。休憩、点呼、荷待ち、積み降ろし、帰庫後の作業まで含めて、生活をどれだけ削るかを見る数字です。
この記事でわかること:
- 拘束時間・労働時間・休息期間の違い
- 2024年4月適用の改善基準告示における拘束時間の上限
- 求人票と面接で、危ない職場を見抜く質問
結論:拘束時間は「家に帰れない時間」を見る数字
先に上限の数字を挙げます。トラックドライバーの拘束時間は、2024年4月適用の改善基準告示で1日は原則13時間・最大15時間、1か月は原則284時間、1年は原則3,300時間が基準です。この数字を頭に入れると、求人票の見え方が変わります。
未経験者が求人票を見るとき、まず目に入るのは「実働8時間」「月収例」「週休2日」などです。しかしドライバー職では、実働時間だけでは生活のきつさを判断できません。
たとえば、次の2つの求人を比べてください。
| 求人 | 表示 | 実際の見方 |
|---|---|---|
| A社 | 実働8時間、休憩1時間 | 点呼・積み込み・荷待ち・帰庫後作業で拘束12時間 |
| B社 | 実働8時間、平均拘束9.5時間 | 出社から退社までの見込みが明記されている |
同じ実働8時間でも、A社とB社では生活がまったく違います。A社は家を出てから帰るまでが長く、夕食、家族時間、睡眠を削りやすい働き方です。B社は拘束時間を説明している分、比較しやすい求人です。
拘束時間の数字を知っていると、求人の見え方が変わります。給料の高さも、拘束時間とセットで見なければ判断できません。収入面はドライバーの給料のしくみもあわせて確認してください。
拘束時間・労働時間・休息期間の違い
まず言葉を整理します。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 拘束時間 | 始業から終業まで、会社の管理下にある時間 | 6時出社、18時退社なら12時間 |
| 労働時間 | 実際に働いている時間。手待ち時間を含む場合がある | 運転、積み降ろし、指示待ち |
| 休憩時間 | 労働から離れる時間。ただし拘束時間には含まれる | 昼休憩、待機中の休憩 |
| 休息期間 | 勤務終了から次の勤務開始まで、会社の拘束を受けない時間 | 19時退社、翌6時出社なら11時間 |
ここで混同しやすいのが、休憩と休息期間です。昼休憩は休んでいても、まだ会社の勤務中です。拘束時間には含まれます。休息期間は、勤務が終わってから次の勤務までの完全に自由な時間です。
もう1つ重要なのが手待ち時間です。荷主の倉庫で荷物を待っている時間、いつ呼ばれるかわからない状態で待機している時間は、単なる自由時間ではありません。労働時間や拘束時間の管理から外してよいものではありません。
現行基準:1日原則13時間、最大15時間
トラックドライバーには、改善基準告示という専用の基準があります。2024年4月から現行基準が適用されています。詳細は厚生労働省のトラック運転者の改善基準告示で確認できます。
拘束時間の基本は次のとおりです。
| 項目 | 現行基準 |
|---|---|
| 1日の拘束時間 | 原則13時間以内 |
| 延長する場合 | 最大15時間 |
| 14時間超の日 | できるだけ少なくする。週2回までが目安 |
| 1か月の拘束時間 | 原則284時間以内 |
| 1年の拘束時間 | 原則3,300時間以内 |
| 労使協定による例外 | 年6回まで月310時間可。ただし年3,400時間以内など条件あり |
古い記事や古い職場の感覚では、「最大16時間」「月293時間」といった改正前の数字が出てくることがあります。これは2024年3月までの基準です。現在の求人や職場を判断するときは、現行基準で見てください。
なお、長距離貨物運送などには条件付きの特例があります。1週間の運行がすべて長距離貨物運送で、休息期間を住所地以外で取る場合など、細かい条件があります。特例は「いつでも使える抜け道」ではありません。毎週のようにぎりぎりの運行が続くなら、職場の運行計画そのものを疑うべきです。
月284時間を生活に置き換える
月284時間と聞いても、感覚がつかみにくいかもしれません。月に22日働くとすると、1日あたり約12.9時間です。つまり、毎日13時間近く拘束されると、月の原則上限に届きます。
たとえば、次のような働き方です。
| 時刻 | 内容 |
|---|---|
| 5:30 | 出社、点呼、車両点検 |
| 6:00 | 積み込み |
| 7:00 | 出発 |
| 9:00 | 1件目納品、待機 |
| 12:00 | 休憩 |
| 13:00 | 午後便 |
| 16:30 | 帰庫、日報、翌日準備 |
| 18:30 | 退社 |
この例は、始業5時30分、終業18時30分なので拘束13時間です。実際の運転時間はもっと短くても、拘束時間は上限近くになります。ここに渋滞、荷待ち、急な再配達、積み増しが入ると、すぐに14時間を超えます。
「運転していない時間が多いから楽」とは限りません。待っている時間も帰れない時間です。家族の送り迎え、通院、睡眠、食事の時間は削られます。拘束時間は、体力だけでなく生活設計の数字です。
求人票で危ないサインを見る
求人票に「拘束時間」と書かれていることは多くありません。だからこそ、次の表で見ます。
| 求人の表現 | 見方 |
|---|---|
| 実働8時間のみ | 拘束時間を面接で確認する |
| 早出・残業あり | どのくらいの頻度か聞く |
| ルートにより変動 | 平均と最長例を聞く |
| 月収例が高い | その月収の拘束時間・残業時間を聞く |
| 休憩あり | 自由に休めるのか、待機なのか確認する |
| 繁忙期あり | 繁忙期の拘束時間と休日を聞く |
危ないのは、給与の数字だけが大きく、時間の説明が薄い求人です。「月収35万円以上可」と書かれていても、その中身が長時間拘束と残業代なら、生活への負担は大きくなります。
面接では、次のように聞いてください。
- 「この職種の平均的な始業・終業時刻を教えてください」
- 「1日の平均拘束時間はどれくらいですか」
- 「月の拘束時間はどのように管理していますか」
- 「荷待ち時間は勤務時間として記録されますか」
- 「14時間を超える日は、月にどれくらいありますか」
- 「2024年4月以降、運行の組み方で変えたことはありますか」
この質問に具体的な数字で答えられる会社は、少なくとも管理しようとしています。逆に「現場による」「みんなやっている」「慣れれば大丈夫」だけなら注意してください。